かけるかな

もののあはれ

ロキノン厨におすすめしたいアイドルソング Hey! Say! JUMP編

バンプアジカンエルレ世代の皆様、かつて「地上波に出るバンドはダサい」という風潮があったことを、覚えているだろうか。

 

今でこそサカナクションをはじめとする「夏フェス」に出演するようなバンドがミュージックステーションに登場することは珍しくなくなったが、私が中学生のころ、コンポの前で正座をして歌詞カードを見ながら聞くほど敬愛していたBUMP OF CHICKENは地上波のテレビに出ない主義を貫いていて、その主義=かっこいい、地上波の音楽番組に出演するアーティストはダサい、そう思っていた。例外としてthee michelle gun elephantミュージックステーションへの出演を果たしているが、バンプエルレアジカン世代の私にとってはミッシェルは少し世代が上だったためリアルタイムではなく、それは「『t.A.T.u. Mステドタキャン事件』をミッシェルが救った伝説」として語り継がれているだけで*1、当時勢いのあったバンドは揃いも揃って地上波の音楽番組には出演しなかった。それもあって、バンプエルレアジカン世代の私たちは「地上波=ダサい」という意識を持ち続けてしまったし、前述の3組と同世代にあたるACIDMANストレイテナーミュージックステーションに出演したものの、その「ダサい」文化に対していかに立ち向かえるか、それこそ「ゼウス」のジャニーズ vs 芸人の構図のように、まるで試合に挑むような様相で見ていた。特にストレイテナーホリエアツシ氏に至っては、番組出演中頑なにサングラスを外すことなく、トークから演奏までこなした。果たしてそれは勝利だったのか―ここでその結論について触れるのはよそう。ただ一つだけ言いたいのは、ストレイテナーは今でもワンマンに行くほど大好きなバンドである。

 

私の体感的なところでいうと、Perfumeが売れ始めてから、アイドルの音楽とバンド、シンガーソングライターの作る音楽との垣根はかなり取り払われたように思う。時を同じくしてSNSが広く使われるようになり、自己の趣味について個々人が発信する機会も増えたぶん、もともとジャンルの垣根を越えて音楽を楽しんでいた人々が顕在化するようになったのかもしれない。今では数多のバンドマンがアイドルに曲を提供しているし、ゼロ年代もゆうに過ぎた2016年においてこんな記事などあまり意味もないのかもしれないけれども、アイドルが歌う名曲を、ほんの少しだけれども紹介していきたい。もし少しでもアイドルソングに対して偏見を持ってしまう人がいるのなら、それを取り払う一助となれば幸いだ。ひとまず今回はHey! Say! JUMPからセレクトしてみよう。

 

アルバム『smart』/シングル『ウィークエンダー/明日へのYELL』収録

作詞:三井八雲 / Vandrythem

作曲:原一博

このブログでも、私のTwitterでも幾度となく触れてきたが、『ウィークエンダー』は等身大アイドルソング部門の最高峰だ。耳馴染みのいいメロディはとかくキャッチーで、一度聞いただけで覚えられる。どこか懐かしさを覚えるディスコ調のイントロも、老若男女の耳をテレビに向けさせる。

それからアイドルソングに欠かせないものといえば、ちょっとダサめの歌詞。Hey! Say! JUMPの前身ユニットというべきかはわからないが、旧Hey! Say! 7として発売された『Hey! Say!』というスーパートンチキソングがある。今でこそどんな曲でも愛せる廃人になってしまったが、斜に構えたロキノン厨として生きていた私にとっては、「舐めてんだろ」としか思わなかった。「僕らは平成Only! 昭和でShowは無理!」という衝撃的な歌詞には、ギリギリ滑り込み平成生まれの私でさえ、開いた口がふさがらなかった。話が脱線したが、そこまで振り切ってしまうと、まだアイドルソングの心地よさを知らない音楽の受け手に与えられるのは悪い意味での衝撃しかない。その点でこの『ウィークエンダー』は「土曜日の夜は ハイビート胸騒ぎ I miss you!ウィークエンダー だから待ってるって言ってんだ」と、ルー大柴のような様相で日本語の中に絶妙に英語を織り交ぜつつ、心地よく韻を踏んでいる。特に「I miss you!~」は有岡大貴さんにパートが割り振られているが、彼の少々ざらついた声も耳に残りやすい。Aメロの時点でフックがありすぎるのだ。

そこからサビに向けてのテンションの高め方も最適で、「恋はキラリ、ミステリー」というサビの出だし。絶妙にダサい歌詞と抜群にキャッチーなメロディにひれ伏すしかない。そしてサビ終わりに全員がソロでワンフレーズずつ歌いラップを回していく。耳馴染みのいいメロディで曲へ注意を注がせておき、この曲いいかも、と思わせたところで9者9様の声が乗るラップ。無論ソロパートゆえ、カメラにはひとりずつがアップで抜かれる。視聴者はここで一人ひとりの声と顔を把握する。完璧である。

個人的にジャニーズの曲で「これはヤバい!」と思った曲は嵐の『きっと大丈夫』以来だった。それが2006年発売であったことを考えると、向こう10年間『ウィークエンダー』級の名曲がジャニーズ事務所から生まれるのだろうか、という不安もあるが、どうか世界中のクリエイターたちが、ジャニーズのアイドルに抜群にキャッチーな曲を提供してくれることを願ってやまない。

ちなみに『ウィークエンダー』は、2014年ジャニーズ楽曲大賞(非公式)でも、2014年発売の全ジャニーズ楽曲の中で堂々の第1位を獲得している。ジャニオタの素晴らしい文才がほとばしるコメントは以下をご参照ください。

楽曲部門第1位(10996ポイント獲得) | ジャニーズ楽曲大賞2014

ウィークエンダー』と同じ系統としては両A面として発売された『明日へのYELL』、2015年発売のアルバムタイトル曲*2『JUMPing CAR』などが挙げられる。こちらも抜群に耳馴染みのいいメロディなので、ぜひチェックしていただきたい。

 

  • 『RELOAD』

アルバム『smart』収録

作詞:有岡大貴

作曲:Joakim Björnberg、Christofer Erixon、Atsushi Shimada

キャッチーで耳馴染みはよいけれども、ちょっとクールで格好よさげな雰囲気、ロキノン厨は大好物ではないだろうか。アイドルがやるにしてはいくばくかクールすぎるトラックには、世界中を席巻しているEDMに通じる雰囲気も漂う(あそこまでゴリゴリではないけれども)。王道アイドル曲やトンチキすぎてお手上げソングが多かったHey! Say! JUMPにとって、ここまでクールに振り切ったアレンジはなかなかないように思っている。「カッコイイ」を押し出した曲でいうと、『beat line』や『BOUNCE』、『Ride with me』などもそうかもしれないが、あれはアイドルソングの残り香が感じられる。その点『RELOAD』は、アイドルソング的フックというよりも、アコギやハンドクラップなど、EDM的でありながらもややアコースティック寄りの音作りが、バンドの音にまみれてきた耳にとって非常に心地が良いのだ。ここまでクール一辺倒にまとめられたのも、作詞に携わる有岡大貴さんの手腕が大きかったのではないだろうか。有岡大貴さんが普段好んで聞いているEDMをアイドルソングとして落とし込むとすれば、これが最良の形だと思う。私はEDMはお腹がいっぱいの時に聞くと胃腸が苦しくなってしまうためあまり好まないし、アイドルソングに慣れ親しんだアイドルファンの耳にとってもEDMは音圧が高すぎると思うのだが、それをJ-POP的に聞きやすいアプローチで挑んだ結果ここに落ち着いたのであれば、なんと素晴らしいことだろうか。有岡大貴さんに100点満点をあげたい、素直にそう思える曲である。

 

シングル『Come On A My House』初回限定盤2収録

作詞:薮宏太

作曲:龍

続いてはHey! Say! JUMPのお兄さんチームことHey! Say! BESTによる『スクランブル』。こちらは薮宏太さんが作詞を手掛けている。EDM的アプローチで、歌詞も英語と日本語を織り交ぜていた有岡大貴さん作詞の『RELOAD』とは打って変わり、『スクランブル』は全日本語詞。薮さんはきれいな日本語を使うなあという印象が強い。職業としての作詞家となってしまうと、素直に目の前の情景を綴るというよりは、アイドルソングであれば奇を衒ってしまったり、テクニカルになることも多いだろうが、「いちアイドル」として作詞をする薮宏太さんの歌詞は素直に情景が想像できて、それもまた素晴らしいので、彼にも有岡大貴さん同様に100点をあげたい。イントロはピアノと弦楽器の音が印象的だが、トラックは全体を通しては機械音が効いており、ビートも心地よく刻まれる。同様に切なメロ×薮さん作詞の曲としては『切なさ、ひきかえに』もあり、こちらも良曲である。恐らく私が高校生だったらば、一人の帰り道は『スクランブル』や『切なさ、ひきかえに』をヘビロテしていたに違いない。

余談だし、完全にオタクとしての所感だが、普段コンサートで『スクールデイズ』という楽曲を中心に据えたコントを行っているHey! Say! BESTの皆さんが、俺たちカッケェ曲もできるんすよ、とこの曲を歌い踊る姿は非常に美しい。

 

  • 「ありがとう」〜世界のどこにいても〜』

アルバム『JUMP WORLD』/シングル『「ありがとう」〜世界のどこにいても〜』収録

作詞:森若香織村野直球 / 亜美

作曲:STEVEN LEE

前述の3曲は良曲か否かという観点から見てきたが、ここでひとつ、アイドルにしか歌えない素晴らしい曲、という観点からこの曲を紹介したい。私はこの曲を初めて聞いた時、先ほども触れた旧Hey! Say! 7『Hey! Say!』に勝るとも劣らない衝撃を受けた。歌詞をひとまず見ていただきたい。全てが理解できる。

「ありがとう」〜世界のどこにいても〜 - Hey! Say! JUMP - 歌詞 : 歌ネット

アレンジはハード寄りなやや旧時代のエレクトロで、トラックだけを聞くとカッコイイ系だが、世界中の「ありがとう」の言葉が乗ることによって、ハードなトラックとトンチキなリリックというアンバランスさが生まれ、テレビの画面にはそれをまたカッコよくキメキメでパフォーマンスするアイドルことHey! Say! JUMPがいる。この曲の素晴らしさに気づいてしまった方は、ジャニオタの仲間入りができるだろう。なお、そこはかとないBIGBANG感があり、『「ありがとう」〜世界のどこにいても〜』をBIGBANGファンの先輩にオススメしたところ、「素晴らしい」と称賛の声があったこともここに記しておこう。

 

  • 『ペットショップラブモーション』(知念侑李・中島裕翔・髙木雄也・伊野尾慧)

アルバム『JUMPing CAR』初回限定盤2収録

作詞:Vandrythem

作曲:Simön Janlöv、Pessi Levanto、DAICHI

2014年の最強アイドルソングが『ウィークエンダー』ならば、2015年アイドルソングの大問題作であり傑作が『ペットショップラブモーション』であると私は思う。アルバム『JUMPing CAR』では前作『smart』に続き、ユニット曲の制度が導入された。そこで『ペットショップラブモーション』の名のもとに集ったのが知念侑李さん、中島裕翔さん、髙木雄也さん、伊野尾慧さんの4名だ。先ほどの『「ありがとう」〜世界のどこにいても〜』でトンチキリリックへの耐性はできたかと思うので、早速、歌詞を見ていただこう。ちなみに歌っているのは成人男性4名であるということを念頭に置いてほしい。

ペットショップラブモーション - 知念侑李・中島裕翔・高木雄也・伊野尾慧(Hey! Say! JUMP) - 歌詞 : 歌ネット

どう考えてもヤバい。ちなみにネズミが知念さん、ウサギが中島さん、イヌが高木さん、ネコが伊野尾さんというラインナップだ。配役は伊野尾慧さんが決めたとのこと。Hey! Say! JUMP、いや、伊野尾慧さん正気か?とも思うし、有岡大貴さんにも薮宏太さんにも100点満点をあげてきたけれど、さすがに伊野尾慧さんにはあげられないのでは…そんな思いが一瞬頭をよぎる。だけれども、メロディが抜群にポップで、エモさすら感じてしまう。これは名曲のメロディラインだ。すでに良曲とトンチキリリックの組み合わせこそ素晴らしい、そんな思考回路に至ってしまった僕たちは、この曲のメロウでキュートでポップなメロディに、チューチューニャーニャーワンワンピョンピョンという鳴き声(1匹のみジャンプする姿を表すオノマトペ)が乗るそれが、気付けば心地よくなってしまっている。もちろん、素晴らしい配役を考えた伊野尾慧さんにも100点満点をあげよう。ああ、アイドルソングは素晴らしい、今日も声高らかに、私はオタクとして生きてゆく。

*1:なお、このときV6も出演しており、井ノ原快彦さんがミッシェルのファンでノリノリで彼らの演奏を見ていたこともまた有名な話で、イノッチの株が上がった

*2:にもかかわらずアルバムプロモーション期に一切音楽番組で披露されなかった